2007年01月
◇進化を続けるナイン
昨夏の新チーム編成後、監督、中富力(41)はまず、ナインに全国レベルを知ってもらうことから始めた。その一つが遠征だ。夏休みの練習試合でさっそく力の差を思い知らされる。
チームは昨夏のレギュラー5人が残る。練習試合でほぼ負けなし。2枚看板の高橋貴洋、三上慎司が先発すれば、そのほとんどで大差で勝利した。
ところが――。8月11日の神港学園(兵庫)との練習試合。同学園のエース、林健太は昨春のセンバツで南陽工(周南市)を完封している。練習試合では林のほか、2番手投手もマウンドに上がらず、3番手投手。「序盤から引きずり降ろし、林君と対戦したい」。ナインの多くはそんな思いでバッターボックスに入った。が、結局打ち崩せず、逆にエース高橋が打ち込まれ1―5で完敗。三上が先発した2試合目も及ばなかった。
試合後、高橋と三上、捕手の原田直輝は同学園監督、北原光広に呼ばれた。制球力の重要さなどをアドバイスされ「追い込んでからの決め球よりコントロールの重要性を学んだ」と高橋。このときの屈辱はナインにとって相当な刺激になった。
以来、ナインは常に全国レベルを念頭に練習メニューをこなすようになった。いっぷう変わった柔軟運動など遠征先で印象に残った練習法はどんどん取り入れた。練習メニュー表には「東福岡」など強豪校の名がいくつも並ぶ。
9月以降、練習試合と秋季大会で12連勝し、中国大会ではベスト4進出。準決勝で広陵(広島)と対戦したが、4点を追う苦しい展開ながら九回に三上の本塁打で2点差に迫るなどの粘りを見せた。安打数では広陵を上回った。
試合後、中富は「強豪と互角の試合ができ自信になった」とナインをねぎらった。センバツ出場を決めた26日、主将の国本鐘悟は「広陵ともう1回やりたい。今、全力で向かえば通用する」と胸を張った。
ナインは進化し続け、半年間で頼もしく成長した。しかし、玉国光男総監督は満足しない。「今のままではまだまだ全国の強豪には勝てない。冬場のレベルアップが勝利の鍵だ」(敬称略)=つづく
1月29日朝刊
昨夏の新チーム編成後、監督、中富力(41)はまず、ナインに全国レベルを知ってもらうことから始めた。その一つが遠征だ。夏休みの練習試合でさっそく力の差を思い知らされる。
チームは昨夏のレギュラー5人が残る。練習試合でほぼ負けなし。2枚看板の高橋貴洋、三上慎司が先発すれば、そのほとんどで大差で勝利した。
ところが――。8月11日の神港学園(兵庫)との練習試合。同学園のエース、林健太は昨春のセンバツで南陽工(周南市)を完封している。練習試合では林のほか、2番手投手もマウンドに上がらず、3番手投手。「序盤から引きずり降ろし、林君と対戦したい」。ナインの多くはそんな思いでバッターボックスに入った。が、結局打ち崩せず、逆にエース高橋が打ち込まれ1―5で完敗。三上が先発した2試合目も及ばなかった。
試合後、高橋と三上、捕手の原田直輝は同学園監督、北原光広に呼ばれた。制球力の重要さなどをアドバイスされ「追い込んでからの決め球よりコントロールの重要性を学んだ」と高橋。このときの屈辱はナインにとって相当な刺激になった。
以来、ナインは常に全国レベルを念頭に練習メニューをこなすようになった。いっぷう変わった柔軟運動など遠征先で印象に残った練習法はどんどん取り入れた。練習メニュー表には「東福岡」など強豪校の名がいくつも並ぶ。
9月以降、練習試合と秋季大会で12連勝し、中国大会ではベスト4進出。準決勝で広陵(広島)と対戦したが、4点を追う苦しい展開ながら九回に三上の本塁打で2点差に迫るなどの粘りを見せた。安打数では広陵を上回った。
試合後、中富は「強豪と互角の試合ができ自信になった」とナインをねぎらった。センバツ出場を決めた26日、主将の国本鐘悟は「広陵ともう1回やりたい。今、全力で向かえば通用する」と胸を張った。
ナインは進化し続け、半年間で頼もしく成長した。しかし、玉国光男総監督は満足しない。「今のままではまだまだ全国の強豪には勝てない。冬場のレベルアップが勝利の鍵だ」(敬称略)=つづく
1月29日朝刊
第79回選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高校野球連盟主催)に2年ぶり7回目の出場を決めた宇部商野球部。土壇場で数々の奇跡を起こす試合巧者ぶりから「ミラクル宇部商」と呼ばれるようになって久しい。春夏通算19回目となる夢舞台で、今度はどんな奇跡を見せてくれるのか。センバツ出場への軌跡と、球児を取り巻く人たちを追った。【大村健一】
◇適材適所で個性発揮
昨年9月にあった秋季県大会の小野田工戦。延長十一回、1死一、二塁のピンチでの内野手の間を抜ける当たりに誰もが負け越しを覚悟した。が、右翼手、国本鐘悟(主将、2年)の前進守備でホームをつかせず、後続もピシャリ。そして延長十二回、下井修平(2年)のタイムリー二塁打でサヨナラ勝ちした。
続く準々決勝の岩国戦では1点を追う九回2死満塁で、これまでノーヒットの9番、河内山大起(2年)が登場。2ストライクと追い込まれ、あきらめムードが漂う。ところが、目の覚めるようなクリーンヒットで一挙逆転。中国大会出場をものにした。
鮮やかな勝利に、監督の中富力(41)は「何度もミラクルを巻き起こせたのは、土壇場で勝負を託せる選手に出番が回ってきたからです」と振り返る。
プレーの背景には一体何があるのか。
国本は小野田工での前進守備について「(エース)高橋貴洋(2年)の球は走っていた。打たれるにしても必ず詰まる」と判断、早々と浅い守備についていた。サヨナラ打の下井は昨年夏、守備が三塁手から負担の少ない一塁手に替わり打撃に専念。岩国戦で逆転打を放った俊足の河内山も下位打線からの攻撃を期待され昨秋から9番を打っていた。
中富は「2試合とも監督にとってはたまらない試合でしたよ」と苦笑するが、最大の勝因は的確な選手起用にあったのだ。国本も昨年「ストレートとスライダーが主体の高橋の投球を考えると右翼線に難しい打球が飛ぶ」(中富)と中堅手から右翼手に転向している。
大胆なコンバートなどの結果、3番、下井の公式戦打率は4割3分、河内山が3割9分、トップバッターの国本3割超など、どの打順からもチャンスを作り還す攻撃パターンが定着してきた。投手陣は安定感が増し、堅守も際立っている。
しかも「今年のチームには最後の1球まであきらめない粘り強さもある」と中富は太鼓判をおす。ミラクルは偶然ではなく必然だったのだ。(敬称略)=つづく
1月28日朝刊
◇適材適所で個性発揮
昨年9月にあった秋季県大会の小野田工戦。延長十一回、1死一、二塁のピンチでの内野手の間を抜ける当たりに誰もが負け越しを覚悟した。が、右翼手、国本鐘悟(主将、2年)の前進守備でホームをつかせず、後続もピシャリ。そして延長十二回、下井修平(2年)のタイムリー二塁打でサヨナラ勝ちした。
続く準々決勝の岩国戦では1点を追う九回2死満塁で、これまでノーヒットの9番、河内山大起(2年)が登場。2ストライクと追い込まれ、あきらめムードが漂う。ところが、目の覚めるようなクリーンヒットで一挙逆転。中国大会出場をものにした。
鮮やかな勝利に、監督の中富力(41)は「何度もミラクルを巻き起こせたのは、土壇場で勝負を託せる選手に出番が回ってきたからです」と振り返る。
プレーの背景には一体何があるのか。
国本は小野田工での前進守備について「(エース)高橋貴洋(2年)の球は走っていた。打たれるにしても必ず詰まる」と判断、早々と浅い守備についていた。サヨナラ打の下井は昨年夏、守備が三塁手から負担の少ない一塁手に替わり打撃に専念。岩国戦で逆転打を放った俊足の河内山も下位打線からの攻撃を期待され昨秋から9番を打っていた。
中富は「2試合とも監督にとってはたまらない試合でしたよ」と苦笑するが、最大の勝因は的確な選手起用にあったのだ。国本も昨年「ストレートとスライダーが主体の高橋の投球を考えると右翼線に難しい打球が飛ぶ」(中富)と中堅手から右翼手に転向している。
大胆なコンバートなどの結果、3番、下井の公式戦打率は4割3分、河内山が3割9分、トップバッターの国本3割超など、どの打順からもチャンスを作り還す攻撃パターンが定着してきた。投手陣は安定感が増し、堅守も際立っている。
しかも「今年のチームには最後の1球まであきらめない粘り強さもある」と中富は太鼓判をおす。ミラクルは偶然ではなく必然だったのだ。(敬称略)=つづく
1月28日朝刊
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