第79回選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高校野球連盟主催)に2年ぶり7回目の出場を決めた宇部商野球部。土壇場で数々の奇跡を起こす試合巧者ぶりから「ミラクル宇部商」と呼ばれるようになって久しい。春夏通算19回目となる夢舞台で、今度はどんな奇跡を見せてくれるのか。センバツ出場への軌跡と、球児を取り巻く人たちを追った。【大村健一】
 ◇適材適所で個性発揮
 昨年9月にあった秋季県大会の小野田工戦。延長十一回、1死一、二塁のピンチでの内野手の間を抜ける当たりに誰もが負け越しを覚悟した。が、右翼手、国本鐘悟(主将、2年)の前進守備でホームをつかせず、後続もピシャリ。そして延長十二回、下井修平(2年)のタイムリー二塁打でサヨナラ勝ちした。
 続く準々決勝の岩国戦では1点を追う九回2死満塁で、これまでノーヒットの9番、河内山大起(2年)が登場。2ストライクと追い込まれ、あきらめムードが漂う。ところが、目の覚めるようなクリーンヒットで一挙逆転。中国大会出場をものにした。
 鮮やかな勝利に、監督の中富力(41)は「何度もミラクルを巻き起こせたのは、土壇場で勝負を託せる選手に出番が回ってきたからです」と振り返る。
 プレーの背景には一体何があるのか。
 国本は小野田工での前進守備について「(エース)高橋貴洋(2年)の球は走っていた。打たれるにしても必ず詰まる」と判断、早々と浅い守備についていた。サヨナラ打の下井は昨年夏、守備が三塁手から負担の少ない一塁手に替わり打撃に専念。岩国戦で逆転打を放った俊足の河内山も下位打線からの攻撃を期待され昨秋から9番を打っていた。
 中富は「2試合とも監督にとってはたまらない試合でしたよ」と苦笑するが、最大の勝因は的確な選手起用にあったのだ。国本も昨年「ストレートとスライダーが主体の高橋の投球を考えると右翼線に難しい打球が飛ぶ」(中富)と中堅手から右翼手に転向している。
 大胆なコンバートなどの結果、3番、下井の公式戦打率は4割3分、河内山が3割9分、トップバッターの国本3割超など、どの打順からもチャンスを作り還す攻撃パターンが定着してきた。投手陣は安定感が増し、堅守も際立っている。
 しかも「今年のチームには最後の1球まであきらめない粘り強さもある」と中富は太鼓判をおす。ミラクルは偶然ではなく必然だったのだ。(敬称略)=つづく

1月28日朝刊