「絶対に抑えてやるから」。二回裏無死満塁、岩国に2対2の同点に追いつかれた場面で、マウンドに上がる際、先発した三上慎司投手(2年)に声をかけた。しかし岩国に1点を奪われ、さらに1死満塁。今浦卓朗選手(3年)に投じたこん身の直球はセンター前にはじき返された。
 05年夏、1年生ながら三塁手として活躍。堅守で甲子園ベスト4入りに貢献した。その後、強肩を買われて投手に転向。昨夏もエースとして登板したが2回戦で早鞆打線に20安打を浴びて敗れた。「それまでは三振が取れるスライダーなどの決め球を磨くことばかりを考えていた。でも大事なのは制球力だということに気付いた」
 その後は、秋季大会7試合を防御率1・95に抑え、センバツ出場の立役者になった。中富力監督(42)も「ピンチでも表情を変えない。精神的に強くなった」と評価。センバツでは、日大藤沢(神奈川)打線を抑え、自信をつけた。この日も四回以降は1安打無四球の完璧な投球を見せ、味方の反撃を待った。ところが--。
 「三上との約束を守れなかった」と試合後、しっかりした口調で後悔の言葉を口にした。そして「三上は2年生なのに自分と同じくらい良い球を投げる。このまま成長すれば、すごい投手になれる」。目を真っ赤にはらし号泣する後輩をねぎらった。【大村健一】

〔山口版〕毎日新聞 2007年7月28日