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  Part26:長もち木材

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  屋久島の屋久杉は樹脂分が多いため腐りにくい性質を持っています。

  昔、屋久杉は神聖なもので伐採が禁止されていました。

  想像を超える遙かな時を重ねて生き続ける木に自然に畏敬(いけい)の念を持っていたのです。

  はじめて伐られたのが、1586年に方(ほう)広(こう)寺を建設した時です。

  秀吉が命令した形で、建設材料として伐採されました。

  それが、およそ420年前。

  この時の切り株が、数百年朽ちずに残っているのが、ウィルソン株です。

  1914年(大正3年)にアメリカの植物学者であるウィルソンによって
  調査されたことにより、その名前が付けられました。

  切り株だけではなく、その時伐られた枝の部分も朽ちずに
  今もジャングルに横たわっているといいます。

  木材は通常、雨露に濡れっぱなしになる所に放置しておくと
  すぐに腐ってなくなってしまうのですが、
  ウィルソン株のように腐朽菌によって分解されないのは、珍しいことです。

  特に、「月に三十五日雨が降る」といわれるこの屋久島で腐らなかった
  というのは驚くべきことでしょう。

  伐採をはじめたことにより、薩摩の中でも農地が少なく貧しかった
  屋久島の人々の生活が潤うことになりました。

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  この藩政時代に伐った木は細かく割って、屋根葺き材として納められていたといいます。

  ただし、容易に割れなかった部分は放置されてそのままだったといい、
  200年以上も放置されていた物もあったそうです。

  それらの心材部分は200年以上経ても十分に用材として使用できたため、
  近代の営林署の収入に寄与したといいます。

  このように、木材はその成分や量によって耐久性が異なってきます。

  屋久杉ほどではありませんが、
  樹種によって耐久性を高く保(たも)つ材がありますので紹介しましょう。

  ヒノキ科に属するもので、「木曽の五木」の一つのネズコ、
  その他、アスナロ、イブキ、タイワンヒノキなどには、
  強い抗菌作用を持つトロポロン類が、
  同じくヒノキ科のインセンスシーダーには、p-メトキシチモールが
  心材中に含まれていて、腐りにくいと言われています。

  土台などに使われていて今や希少価値となっているクリや、
  家具や小物などに使われるクルミ、イタヤカエデなどには、
  腐朽菌の害を抑えたり、虫からの食害を抑えたりする成分のタンニンが含まれています。

  こうして考えると、木が長く生き続けるための潜在能力を、
  人間が住まいの材料にうまく活(い)かしていたのですね。

  ■参考文献
  *1「金閣寺 平成の茶室」木下孝一他、新建新聞社
  *2「木材の科学3 木材の化学」甲斐勇二他、文永堂出版P180
  *3「樹霊」四手井綱英他、人文書院、P51

  (きすみふぁみりー)