●蕎麦の歴史

  2009年もあと2日となりました。

  大晦日には今年を振り返りながら、
  細く長く生きるという意味を込めて
  蕎麦を食べる習慣がありますが、
  蕎麦屋さんに同じ屋号が多く存在することに
  お気づきでしょうか。

  蕎麦屋の屋号といえば、
  「庵」「薮」や「更科」「砂場」など様々です。

  例えば、蕎麦屋の屋号に「庵」が付けられたのは、
  浅草の称住院というお寺の中にあった子院、
  道光庵の庵にあやかって付けられたのが
  始まりと言われています。

  道光庵の庵主は、往来の蕎麦好きで
  蕎麦打ちも上手く、よく蕎麦を檀家の人達に
  振舞っていました。

  蕎麦が評判のあまり、お寺への参拝に
  蕎麦好きが大勢押しかけてきたそうです。

  その後、寺か蕎麦屋か分からないということで、
  親寺の称住院が蕎麦打ち禁止令を出したといいます。

  道光庵の蕎麦は姿を消しましたが、
  その名声にあやかろうと庵という屋号が
  多く付けられるようになったそうです。

  また、「藪」は評判だった蕎麦屋が
  竹藪に囲まれていたことから、
  藪と通称で呼ばれるようになり、
  「更科」は信州蕎麦の産地更科から
  とったのが始まりだそうです。

  さらに、「砂場」の屋号は大阪発祥で、
  大阪城築城の際、砂置き場だった新町砂場の
  近くにあった蕎麦屋が繁盛したことから、
  その店の屋号よりも、砂場という地名で
  呼び親しまれました。

  「藪」「砂場」「更科」はいずれも江戸から続く
  老舗屋号の御三家ですが、
  登録商標を取得しているのは「砂場」のみのため、
  それ以外は勝手に名乗っても
  原則的には問題ないようです。

  これら蕎麦屋が、大流行したのは江戸時代のことで、
  当時の蕎麦屋は、外食の華でした。

  今回紹介した屋号発祥の蕎麦屋も、
  衰退したり、引き継がれたりと、
  屋号の歴史は複雑になっています。

  皆様のお近くにある蕎麦屋は、
  何という屋号が付いたお店でしょうか。

  蕎麦を食べに行くのと同時に屋号にも注目してみると、
  面白いかもしれません。

  (あるる)