●ハイパーインフレへの道
  「景気が回復しても外資系金融機関は日本での雇用を増やさない」。
 
  先日、人材コンサルティング会社エグゼクティブ・サーチ・パートナーズ(ESP)は、
  こんな報告書をまとめました。
 
  実際、日本市場の魅力が薄れていることから、外資大手は日本から
  中国やインド、シンガポールなどの新興国へ投資先をシフトしてきています。

  ESPによると、08年初めから09年8月にかけて、外資系の銀行、証券会社、
  投資ファンド、資産運用会社の日本拠点で、
  社員約4500人がリストラされたと言います。
 
  そのうち外資系金融機関に再就職したのは推計で900人程度です。
  
  つまり、残り3600人は他の業界に移ったか、失業状態にあると考えられます。
 
  その背景には、日本市場は儲からないと評価している外資系が多い現実があります。

  実際、東京証券取引所に上場する外国企業は91年の127社をピークに減少を続け、
  先週にはオランダのエイゴン(保険)が上場廃止となったことで、
  僅か14社となりました。
 
  更に、4月にはスイスのUBS(投資銀行)も上場廃止予定であり、
  新規上場も08年以降途絶えています。
 
  外資系金融機関は90年代、世界2位の時価総額の東京株式市場に注目して
  日本拠点を拡充してきました。
 
  97年に自主廃業した山一証券などの社員を吸収する受け皿にもなってきた経緯があります。
 
  しかし、今ではその面影は見当たりません。

  更に、この傾向は外資系金融機関だけに留まらず、幅広い業種にまで波及しています。
 
  仏ミシュラン(タイヤ)、仏カルフール(スーパー)、米タイム(総合誌)、
  米リバティグローバル(ケーブルテレビ)、伊ヴェルサーチ(ブランド衣料)、
  加バラード・パワー・システムズ(燃料電池)…と、他にも数多くありますが、
  いずれも各業界を代表する大手企業です。
 
  現在の日本経済、財政構造、人口構成…などを踏まえますと、
  外資大手が撤退に踏み切るのは当然なのかもしれません。

  ある調査会社がグローバル企業1000社の経営者を対象に実施した
  「投資魅力度調査」によりますと、前回(07年)調査で15位だった日本は
  今年圏外(26位以下)にまで転落しています。
 
  ソブリンリスクまでもが警戒されているだけに、
  更なる「日本離れ」、「日本売り」が懸念されます。
 
  先週、10年度予算が成立し、一般会計総額は過去最大の92兆円強となりました。
 
  しかし、景気低迷に伴う税収不足により新規国債は44兆円強と
  国債依存度は過去最高の48%とあり得ない姿となっています。
 
  これらが及ぼす効果は将来の「円安」であり、円安は国内における物価上昇を招きます。
 
  日本の舵取りがデフレ脱却ではなく、
  ハイパーインフレに向かっていると感じるのは私だけでしょうか。
  (あるる)