●目が離せない
  19日、中国人民銀行は人民元相場の弾力性を高めるため、
  市場介入を減らし人民元の緩やかな上昇を容認すると表明しました。
 
  これにより元高が進行した場合、今までのように輸出を有利に行えなくなり、
  輸出に頼る中小企業などの業績が悪化してしまう可能性があります。
 
  しかし、元高が原材料の国内価格低下に繋がり、
  コスト低下から業績が改善する企業もあるため国内では賛否両論です。
 
  原材料や燃料価格の上昇などによるインフレ懸念、
  労働争議多発による大幅賃上げなどの問題を抱える中国にとって、
  人民元の上昇は今後どんな影響を与えるのでしょうか。
 
  中国経済の現状に迫ります。
  
  はじめに、現在の中国では生産コストの上昇により
  外国企業の一部撤退や拠点の分散化が進んでいます。
 
  例えば、カジュアル衣料店「ユニクロ」を運営する
  ファーストリテイリングは、2012年からバングラデシュなど
  中国以外での生産比率を現状の倍の30%超にします。
 
  同社は昨年からインド、今年はスリランカへと
  拠点の分散化を進めており、分散化を急ぐ形となります。
 
  また、青山商事は主力商品であるスーツの生産の7割が
  中国に集中しているため、人件費の上昇が続けば
  大きな影響を受けてしまいます。
 
  そのため、今後はベトナムを中心に中国以外の生産比率を高め、
  5年で5割程度にする方針です。

  次に中国企業についてですが、沿海部では労働環境において
  優遇条件を備えた「3優企業」が増加しています。
 
  その条件とは
  (1)最低限の生活維持に必要とされる月給1600元以上、
    日本円換算の約2万円で週休2日、
  (2)エアコン完備、食事付きの宿舎とカラオケなどの娯楽施設を備えている、
  (3)昇給や技能習得の機会がある・・・という3つで、
  これは沿海部の企業が出稼ぎ労働者を引き止めるために実施しています。
 
  現在、政府の景気対策などで内陸部の賃金も上がっているため、
  出稼ぎに出る人が減っているのです。
 
  そのうえ、既存の労働者も春節(旧正月)などで故郷に帰ると
  そのまま退職してしまうそうです。

  このように、今まで外国企業の進出を受け入れ
  「世界の工場」として急成長してきた中国ですが、
  人件費や原材料のコスト上昇によって外国企業の撤退が始まり、
  国内でも影響が出始めています。
 
  今回の人民元の上昇容認が中国にとって良い結果を招くか否かは、
  これからの動向を見ていくしかありません。
 
  しかし、中国経済の現状を打破し更なる成長を成し遂げる為には、
  今回のような大胆な政策が今後も必要になることは間違いなさそうです。
 
  (あるる)