●透ける器

  日本六古窯の一つである信楽焼をご存知でしょうか。
 
  信楽焼の代名詞と言えば、少し首をかしげながら
  右手に徳利・左手に通帳を持っている狸の置物ですが、
  その歴史は比較的浅く、
  明治時代に作られたものが最初と言われています。
 
  狸は「他を抜く」という意味が込められていることから、
  商売繁盛として置かれる縁起物です。
 
  滋賀県甲賀市信楽町を中心に作られ、歴史ある信楽焼ですが、
  最近新たな陶器が生まれました。
 
  それは信楽透器(シガラキトウキ)と言われる、陶器ならぬ、透器です。

  通常の焼き物には大きく分けて陶器と磁器があります。
 
  陶器は粘土が主原料ですが、
  磁器は陶石、長石、珪石などの石の粉を主原料としているため、
  光の透過性に大きな違いがあります。
 
  これは陶器と磁器を見分ける際のポイントとしても使われていました。
 
  つまり、光を通さないものが陶器だったのですが、
  今回開発された信楽透器は、陶器なのに光を通すという、
  これまでの歴史を覆す焼き物のようです。

  その秘密は、ビーカーや試験管などに使われる
  石英ガラスの粉末を原料に使っていることが挙げられます。
 
  通常の陶土に石英ガラスの粉末を50%以上混ぜ、
  石英ガラスが結晶化しないセ氏1200~1300度で焼成します。
 
  厚さ1ミリの透過率は緑色光で27.9%と、
  従来の透光性磁器の2.5倍以上とされています。
 
  また、土のコシが強いため、ろくろや手びねりで成形でき、
  焼いた時に型崩れしにくくなっています。
 
  そのため、陶土とつなぎ合わせた製品を作ったり、
  釉薬で色づけしたりすることも可能のようです。

  今年の3月、東京で行われた展示会では、
  繊細で温もりのある光の質感がとても魅力的で、
  明暗のニュアンスがある透過光が美しいと、
  とても好評だったそうです。
 
  開発に4年かかった信楽透器ですが、
  現在、発光ダイオードを使ったインテリアライトのような照明器具など、
  新たな製品づくりに期待が高まっています。
 
  今後、私たちの生活にどのような形で普及してくるのか
  楽しみで仕方ありません。
  (あるる)