●日本の救務

  今月14日、国際通貨基金(IMF)は日本に対する年次審査報告を発表し、
  先進国で最悪の水準となっている日本の財政状況について、
  「2011年度から段階的に消費税率を引き上げ、財政再建を始めるべき」
  と提言しました。
 
  特に、税率については「消費税率を15%に引き上げれば、
  GDP比で4~5%(20兆円程度)の歳入増が生じる」などと言及しています。
 
  IMFが税率や引き上げ時期などを詳細に示して
  増税を日本に求めるのは初めてのことです。

  報告によりますと、日本の消費税率について、
  14~22%まで引き上げる案が提示され、
  税率引き上げで短期的には「当初の3~5年間は、
  成長率を0.3%程度押し下げる」と推計しています。
 
  しかし、中長期的には、蓄えていた貯蓄が
  消費に回る効果が見込めることから、
  「毎年0.5%ずつ成長率を押し上げる」とも結論付けています。
 
  もちろん、GDP比で約227%まで膨らんでいる
  債務残高を抱える日本の財政に懸念を抱いているからこそ、
  IMFが助言を呈しているわけですが、現状のままでは
  2015年には同250%まで膨らむとも試算されているのです。
 
  同年のギリシャの債務残高が同130%前後であることからも、
  日本の財政悪化が突出していることがお分かり頂けると思います。

  そんな日本の株式市場は外国人主導のマーケットと化しており、
  米国市場の動向に大きな影響を受けています。
 
  その意味ではNYダウの上昇は心強いと言えますが、
  日本経済の景気回復に一服感が漂っているのは事実です。
 
  5月の輸出は前月比1.2%減と2ヵ月ぶりのマイナスとなり、
  輸出数量指数も同0.1%減と15ヶ月振りに減少に転じています。
 
  輸出回復の鈍化により、昨年来堅調に推移してきた
  企業の生産活動の回復も鈍っており、
  5月の鉱工業生産指数も3ヵ月振りに低下に転じてしまいました。
 
  更には、雇用環境も厳しい状況にあり、完全失業率は5.2%と
  3ヵ月連続の悪化となっているのです。

  それにも関わらず、ドル安・ユーロ安から消去法で
  円が買われる(円高)矛盾が生じています。
 
  今後、円高による景気悪化が加速すれば、政策効果で支えられてきた
  個人消費や回復の兆しが見えてきた設備投資にも水を差しかねません。
 
  将来像が見えない日本に対し、外資企業の日本撤退は続き、
  諸外国に比べて高い法人税率が更に日本離れを加速させています。
 
  頼りの綱だった米国経済も今月中旬以降、景況悪化を示す指標が
  相次ぎ発表されるようになりました。
 
  不可解な円高と米国株の下落は、
  日本の経済・財政を更に悪化させることでしょう。
 
  IMFが求める税制改革も必要ですが、
  目先は円安へ導いていくことが急務であり、
  日本の救務であると思います。
 
  (あるる)