●遺伝子の力

  最近、「トクホ」でお馴染みの特定保健用食品や
  ゼロカロリーの飲料をよく目にします。
 
  需要が見込まれるからこその現象であり、
  体脂肪や摂取カロリーを気にする人が増えた証拠でしょう。
 
  「メタボ」という言葉が浸透したことで、
  中高年男性のあいだでもダイエットが
  ブームになっていることは、
  テレビCMからも感じられます。
 
  メタボ、肥満が糖尿病や心臓疾患に繋がることは
  広く知られていますが、「日本人は肥満に弱い」
  ということをご存じでしょうか。

  ここで言う「肥満に弱い」というのは、
  脂肪を溜めやすい体質という意味です。
 
  日本人は可能な限りエネルギーを蓄えることができ、
  効率よく無駄なくエネルギーを使おうとする
  「倹約遺伝子」を他人種に比べて2~4倍という
  高い頻度で持っているそうです。
 
  これは、食文化の違いにより、長い年月を経て
  遺伝子に差が出てきたためと考えられています。
 
  白人は、1万1千年前から
  小麦、エンドウなどを中心とした地中海農耕文化を営み、
  肉や乳製品などの動物性食品を食べてきました。
 
  日本人は、縄文時代は根裁農耕文化、
  弥生時代は稲作農耕文化であったため
  植物性食品が主体でした。
 
  植物性食品は動物性食品に比べ、
  エネルギー、タンパク質、脂質の栄養価が
  相対的に低いため、日本人は白人よりも、
  節約型の遺伝子を持つこととなったのです。

  また、日本人の中でも太りにくい人、
  太りやすい人がありますが、
  「β3-アドレナリン受容体遺伝子」という
  倹約遺伝子を持つ人は、
  アドレナリンが正常に機能しなくなり、
  脂肪が蓄積しやすい体質となります。
 
  この遺伝子は、モンゴロイド系の人種に多く見られ、
  日本人の場合は3人に1人の割合だとされています。
 
  そして、この遺伝子を持つ人はそうでない人に比べて
  1日の基礎代謝が200キロカロリー
  少ないことが分かっています。
 
  内臓脂肪からは身体の代謝機能に影響する
  さまざまなホルモンが分泌されるため、
  糖尿病や動脈硬化の進行が加速するそうです。
 
  例えば、欧米人は肥満から糖尿病を発症するまで
  20~30年の猶予期間があるそうですが、
  日本人は10~15年で糖尿病になってしまうと言うのです。
  遺伝子的に見て、日本人の身体は欧米人に比べて
  エコタイプということになります。
 
  自動車業界はエコや低燃費が人気ですが、
  食の欧米化が進む現在の日本では、
  低燃費の身体は脂肪を蓄積する身体と言えます。
 
  健康な身体を維持する一番の方法は、
  適度な運動と和食や昔から伝わる
  郷土料理を中心とした食事を腹八分、
  ということになるのではないでしょうか。
 
  (あるる)