●孤立債の不安

  欧州統一通貨ユーロが、創設以来、最大の危機に直面しています。
 
  今年5月に合意された1100億ユーロにおよぶギリシャ支援に続き、
  先月末、アイルランドも総額850億ユーロに上る支援を受けることとなりました。
 
  しかし、米格付け会社ムーディーズは、アイルランド支援の決定後に、
  アイルランド国債の格付けを5段階引き下げています。
 
  また、ムーディーズはギリシャの6つの銀行も格下げする可能性があるとの
  声明を出しており、ユーロ圏の不安は依然として根強いものとなっています。

  5月のギリシャ救済の際には、破綻を避けるための迅速な支援が歓迎されました。
  しかし、現在は長期債務の返済能力に焦点が移っていることから、
  目先的な金融支援だけでは不安は払拭されない状況です。
 
  そうした不安があることは、CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)の
  高止まりから見て取れます。
 
  国の信用力が低いほど上昇するCDSはアイルランド国債で約5.5%、
  ギリシャ国債は約9.0%で推移しています。
 
  財政構造の建て直しによってCDSを下げられなければ、
  現在の支援が終了する13年以降、ギリシャとアイルランドは
  債務不履行に陥る可能性が高いとみられていました。

  そこで、欧州連合は今月17日の首脳会談において、
  ユーロ圏の金融安定に向けた安全網となる
  「欧州版・国際通貨基金」を常設する方針を定め、
  「欧州安定メカニズム(ESM)」が13年7月に設立される予定となりました。
 
  そして、このESMが13年半ばに期限切れとなる
  7500億ユーロの緊急融資制度を引き継ぎます。
  ESMの創設も問題の根本を解決するものではありませんが、
  財政構造を建て直すまでに猶予を与え、
  13年以降の債務不履行懸念を抑える効果はありますので、
  ユーロ圏の強い結束を市場に示すことはできたようです。

  そんな中、「日本国債暴落」という言葉をよく目や耳にするようになりました。
 
  日本国債の保有比率は、銀行が38%、民間の保険・年金が24.4%、
  公的年金が11.6%、家計が5%、海外投資家が4.6%、
  その他16.4%となっております。
 
  日本国債は日本人が95%を保有しているから大丈夫とよく言われますが、
  本当にそうでしょうか。
 
  日本国債が暴落しても、日本国債を持たない海外投資家に損は出ません。
 
  ギリシャやアイルランドのケースでは、両国の国債を大量に保有している
  ECBやフランス、ドイツが自国の利益のために助けてくれます。
 
  一蓮托生的なユーロ圏の国債よりも、暴落が始まっても
  誰も買い支えてくれそうもない日本国債に不安を感じるのは私だけでしょうか。
 
  (あるる)