●一対の兎

  21世紀11年目を迎えましたが、この10年、様々なことが起こりました。
 
  この10年の経験から、21世紀はこれから失われていくことになる
  「環境」と「資源」がキーワードになる世紀と言えそうです。
 
  環境問題のひとつに排水の問題がありますが、
  排水は下水道を介して下水処理場へ集められ、
  いくつかの処理を施されて川に流されます。
 
  現在、日本での下水道普及率は75%となっており、下水処理施設は
  公衆衛生改善、水害防止、水質保全の役割を担う大事な施設です。

  下水処理場に集まる汚水は、
  下水道の整備が進んでいくにつれて量が増えています。
 
  集められた汚水は処理の過程で浄化水と汚泥に分けられ、
  汚泥はさらに脱水、焼却処理をされ、灰になります。
 
  汚泥処理には非常に費用がかかり、
  再利用するにも焼却灰にセメントを混ぜたレンガ販売や
  埋め立てなど、利用方法が限られています。
 
  岐阜市では1000トン分の汚泥利用レンガを全て売却しても、
  7700万円の赤字になった事例もあり、
  下水道事業において汚泥は邪魔者でしかありませんでした。

  しかし現在、今まで邪魔者扱いしかされなかった汚泥が
  見直されています。
 
  例えば、長野県諏訪市にある豊田終末処理場からは
  汚泥の処理過程で生じる「溶融飛灰」から高純度の金が発見され、
  年間排出量5トンに対し、約10キロもの金が産出されました。
 
  また、各地の下水処理場では植物の生育に欠かせない三大要素の一つ、
  リン(原料のリン鉱石は100%輸入)を汚泥から回収するなど、
  今までは処理費用がかかるだけの汚泥が、
  貴重な資源の供給源となっています。
 
  その他にも消臭剤の元になるゼオライトの生成などもされています。
 
  また、広島市では民間と協力し、
  火力発電の石炭に変わる石炭代替燃料として、
  汚泥からCO?削減効果が高い低炭素化燃料を作り出す
  プロジェクトが進められるなど、全国で汚泥の再利用
  ―「バイオマスエネルギー」―に注目が集まっています。

  環境をクリーンにしようと下水道を整備した結果、
  処理された汚泥に資源が含まれていた、
  これは一兎を追うものが二兎を得た結果となります。
 
  環境と資源の問題は一対の関係で、
  切り離して解決するよりも複合的に考えた方が、
  より効果的な対策が生まれるのかもしれません。
 
  (あるる)