●希望の黄色い大地

  夏の花といえば、ひまわりを思い浮かべる方が多いと思います。
 
  夏の季語にもなっているひまわりの語源は「日廻り」からきています。
 
  朝は東を向き、夕方には西を向き、夜明け前に再び東を向き、
  太陽を追いかけてひまわりは成長するそうです。
 
  そして完全に開いた花の多くは東向きに咲くことが多いようです。
 
  これから元気なひまわりが咲き誇るのが楽しみですが、
  今年は例年よりも多く、各地で見かけることになりそうです。

  ひまわりには土壌中の放射性セシウムやストロンチウムを
  根から吸収し、茎などに蓄える性質があります。
 
  この性質から、福島の原発事故で汚染された土壌の放射性物質を
  ひまわりや菜の花に吸収させる「ヒマワリ作戦」が福島県で進められています。
  放射性セシウムは肥料の一つであるカリウムと性質が似ているため、
  カリウムなどの肥料を与えなければ、
  ひまわりは土壌からセシウムを取り込みます。
 
  1986年のチェルノブイリ原発事故の際にも、
  土壌浄化のためにひまわりや菜の花が用いられたそうです。
 
  通常、土壌の放射性物質除去には30年以上かかるとされますが、
  ひまわりを植えることで、わずか20日で95%以上も除去できた
  という記録も残っているほど効果は大きいようです。

  しかし、ひまわりも大きな花を咲かせた後には枯れます。
 
  放射性物質を肥料に成長したひまわりですから、
  枯れたひまわりを焼却処分すると、
  放射性物質が煙となって拡散する恐れがあります。
 
  よって焼却はせずに、堆肥作りに利用されている
  高温好気堆肥菌で分解させます。
 
  この菌による分解でひまわりの体積は1%程度となり、
  放射性廃棄物の量を減らすことができるそうです。
 
  また、ひまわりや菜の花から収穫した菜種でディーゼル燃料を、
  茎や菜種の搾りかすからバイオガスを作る実験も進められており、
  より有効的な活用にも期待が膨らみます。

  福島県では官民一体となった「福島ひまわり里親プロジェクト」が
  立ち上げられています。
 
  このプロジェクトは、各地へひまわりの種を送って今年植えてもらい、
  そのひまわりから取った種を福島県へ送り返し、
  来年、福島県で植えようという試みです。
 
  広い地域を黄色のひまわり畑にし、
  希望と復興の象徴として観光客が戻ってくることを目指し、
  「NASAが驚くような黄色い大地」にすることが目標だそうです。
  和名(向日葵)・英名(Sunflower)ともに太陽にちなんだ呼称ですが、
  ひまわりに燦燦と陽が降り注ぐ様を見ると、大きな希望が湧いてきます。
  (あるる)