●3はあるのか

  09年3月~10年3月末まで実施されたQE1では約1兆7500億ドル、
  そして、昨年11月から先月末まで実施されたQE2では6000億ドルが
  米国債の購入に使われました。
 
  供給過剰にしてお金の価値を下げ、景気浮揚を図る量的緩和政策によって、
  ドル安、債券高(長期金利低下)、株高がもたらされました。
 
  S&P500株価指数においては、昨年の8月から25%も上昇しています。
 
  また、金はQE1、QE2が行われる過程で史上最高値を更新し続けてきました。
 
  しかし肝心の景気は浮揚せず、失業率は9%台と高いままで、
  副作用のインフレが目立つ結果となっています。
 
  そのため、追加の緩和策、QE3の導入があるのかが注目を集めています。

  バーナンキ議長は、QE3は「リスクと費用が伴い」「万能薬ではない」とする一方、
  「経済状況が変われば適切に行動する」とも述べ、
  今後の追加緩和策に含みを持たせています。
 
  米財務省は1ヵ月に約1600億ドルの国債を発行しますが、
  国債市場は最大の買い手であるFRBが去ったことで、
  今後の米国債にどの程度の需要が見込めるのか、神経質になっているようです。
 
  外国中銀や保険会社、ファンドからの投資を期待しているようですが、
  すでにJPモルガンはリポートで「米国債をもはやロング(買い)にしていない」とし、
  100兆円を動かす世界一の債券運用会社ピムコは米国債の保有をゼロにして、
  カラ売りを仕掛けています。
 
  現状では有力投資家による米国債の購入は期待できなくなっています。

  そんな中、欧州系格付け大手フィッチは18日、現在最高水準の米国債を、
  米連邦債務の法定上限が8月2日までに引き上げられない場合、
  引き下げ方向で見直すと警告しています。
 
  また、ムーディーズとS&Pの米格付け大手2社も、
  格下げ方向で見直すと表明しており、国の信用力にも異変を及ぼしています。
 
  国の信用力の指標となるクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)市場では、
  国債の信用力首位が米国からドイツに移ったのです。
 
  もちろん、米国債の格下げリスクが高まったことが挙げられます。

  先日、オバマ大統領は、債務の協議で一定の進展が見られたと発表しました。
 
  債務の枠に余裕ができれば、QE3の発動はあるとの予想は飛び交っていますが、
  米国債の買い手がいない今、QE3は何らかの形で発動されるのではないでしょうか。
 
  金の年間生産量は時価換算で10兆円強ですが、
  QE2(6000億ドル=約48兆円)だけでも5倍近くにあたるドルがばらまかれております。
 
  逐次投入による泥沼化、量的緩和政策によるインフレの芽は確実に育っているようです。
 
  (あるる)