●価値あるもの

  10年前、「失われた10年」という言い回しが流行しましたが、
  10年後の今、10年は20年になって使われています。
 
  「失われた20年」、これは経済的損失や低成長を指す意味で
  使われますが、それとは別に、この20年で失われる危機に
  さらされているものがあります。

  平成2年に20万人いた伝統工芸職人は、現在10万人前後にまで
  減っており、日本の伝統工芸の伝承が危ぶまれています。
 
  日本人の器用さ、機械では作れない精巧さが魅力の伝統工芸品ですが、
  失われた20年による経済の低迷で工芸品需要が落ち込んでいます。
 
  そのため、長年苦労して技術を修得しても、技術に見合う収入を
  得られず、後継者不足に陥っています。

  厳しい環境にある伝統工芸の伝承ですが、
  東京都荒川区は、職人見習い、弟子入り修行、職人へのステップを
  支援する伝統工芸技術継承者の育成事業を実施しています。
 
  第一ステップの職人見習いとは、
  伝統工芸の継承希望者へ短期間の現場実習を実施して、
  職人が素質や意思を確認する研修のような期間で、
  日額3千円、月額6万円を上限に手当てが支給されます。
 
  見習い期間を終了し、弟子入り修行期間にステップアップできると
  日額5千円、月額10万円を上限に手当てが支給されます。
 
  また、指導する側の職人にも、指導料として
  1日5千円~1万円が支給されます。
 
  こうした支援事業は荒川区だけでなく、
  九谷焼や山中漆器が有名な石川県にも
  職人育成のサポート制度があります。

  上記のようなサポートはごく一部の例で、
  伝統工芸職人を取り巻く環境は厳しいようです。
 
  そうした中、細かな彫刻を施したギターや、
  漆器で作ったスマートフォンケースなど、新作の伝統工芸品が作られ、
  若い職人の発想力で伝統工芸に新たな魅力が加わり、
  新たな需要が生まれる可能性も期待されています。
 
  こうした新たな芽を育てるためにもサポートの制度は必要だと思います。
 
  一度伝承が途絶えると再生が困難な伝統工芸技術。
 
  数百年も紡がれたかけがえのない伝承と、
  いつの世にもたくさんあるお金、価値のある方を
  大切にするべきではないでしょうか。
  (あるる)