●第3弾の前兆

  欧州の経済問題の深刻化とは対照的に、米国では良好な経済指標が
  相次いで発表されています。
 
  まず、米住宅着工件数は年換算で68万5000戸の
  前月比9.3%増加という1年7ヶ月ぶりの高水準を記録、
  そして12月10日までの1週間の米新規失業保険申請件数は、
  36万6000件と3年半ぶりの低水準になっており、
  米国経済の景気回復を期待させるものとなっています。
 
  しかし、上記の経済指標には気になる点があります。

  まず、住宅着工件数に関してですが、
  一戸建ての件数が前月比2.3%の増加に対して、
  集合住宅は32.2%も増加しており、
  これは一戸建ての購入を諦めた結果、
  集合住宅の需要が増加していることを意味しています。
 
  リストラやドル安、輸出の拡大で企業収益を改善してきた米国経済ですが、
  これは経済構造の改善によるものではないため、
  依然として先行きの不透明感は払拭できておりません。
 
  それが住宅などの個人消費が高まらない原因となっているようです。

  次に、失業率が8.4%と高止まりしていることも気になります。
 
  米国はリーマン・ショック後に約860万人の失業者を出しましたが、
  未だに3割弱の250万人前後しか雇用は回復していません。
 
  新規失業保険申請件数は低下しましたが、
  ショック前の雇用水準には遠く及びません。
 
  また、不安材料のひとつとして、今までの改善を支えてきた
  給与税減税と緊急失業給付が2011年末で失効になってしまうことです。
 
  米議会の与野党は給与税減税に関して、
  ひとまず期間を2ヶ月延長することを決定しましたが、
  その先の対策は講じられていません。

  復調してきたように見える米国経済ですが、
  その実態はとても楽観できるものではありません。
 
  米連邦準備理事会は現在の超低金利政策を少なくとも
  2013年半ばまで続けるとしたうえで、
  来年6月を期限にツイストオペ(短期国債を売却して、
  同額分の長期国債を購入する政策)を実施しています。
 
  そして、MBS(住宅担保ローン証券)への再投資政策も再開するなど、
  様々な手を尽くして、ようやく米国経済の緩慢な改善が
  維持されている状況です。
 
  欧州問題が更に悪化した場合、
  米国に残されたカードは限られていると思います。
 
  そして、その中に量的緩和第3弾(QE3)というカードが
  入っていることは間違いなさそうです。
 
  (あるる)