世界中からやってくる木材ウッドマイレージ
日本は食料の多くを海外からの輸入に頼っている
ということを耳にするようになってから久しいですが、
食料自給率は現在も低下傾向が続いています。
食料自給率(カロリーベース)は、
アメリカ130%、フランス121%、ドイツ93%、イギリス65%、日本39%で、
日本は先進国の中で最低の水準となっています(下のグラフ参照)。
ところで、食料輸入への過大な依存は、
環境に対して多大な負荷を与えるとして、
その負荷の大きさを数値で表現した「フードマイレージ」
という指標があります。
食料を輸送する際の輸送エネルギーの消費に伴い、
大気中に温室効果ガス(CO2)を排出する量を表す指標です。
木材についても同じような指標があり「ウッドマイレージ」と呼ばれています。
どちらのマイレージも輸入量が多いほど、
輸送距離(=マイルズ)が長いほど大きくなり、
日本は「フードマイレージ」と「ウッドマイレージ」のどちらも
他国と比べて著しく大きいことがわかっています。
カナダの大森林。日本で利用する木材の約2割は
アメリカ合衆国やカナダからの北米材。
http://www.jawic.or.jp/kidukai/tomonokai/mail_magazine/069_121130/img/01.jpg
船で海を渡ってきたロシア産の丸太。北海道の小樽の港に入港。
(写真:IPA情報処理推進機構)
(写真:IPA情報処理推進機構)
木づかい友の会の会員の皆さんには、
何度かお伝えしていることですが、
日本は森林資源が大変豊富な国です。
先進国の中では国土面積に占める森林率は68.5%(※)で、
フィンランド、スウェーデンに次いで世界第3位の森林大国です。
ところが、日本の木材の自給率は3割弱で推移しており、
平成23年には26.6%でした。
日本で使われている木材の7割以上は
北米やヨーロッパ、アジア、オセアニア、南米など
遥か彼方から輸送船に載ってやってきます。
日本は「木材輸入大国」とも言えそうです。
(※)FAO「Global Forest Resources Assessment 2010」
木材の輸送に伴う環境負荷=ウッドマイレージ
ところで、海外からの木材輸送時の燃料のほとんどは化石燃料です。
日本の木材供給量の7割以上を占める外国産の木材は、
大量の化石燃料を燃焼させ、
大気中に温室効果ガス(CO2)を放出しながら運ばれてきます。
木材の輸入量が大きいほど、
また輸送距離(=ウッドマイルズ)が長いほど、
燃料の消費量は大きくなるため、環境負荷も大きくなります。
そこで「輸送量×輸送距離」を「ウッドマイレージ」として、
環境負荷を表す数値的な指標としています。
日本はウッドマイレージ大国
次のグラフは、米・独・日の3カ国のウッドマイレージの試算結果を表したものです。
上のグラフをみると、木材輸入について日本は他国と比べて
桁違いに大きなウッドマイレージであることがわかります。
つまり、木材の利用について、日本は他国と比べて
大きな環境負荷をかけていることになります。
その負荷量は米国の5倍、ドイツの22倍です。
日本は世界でトップレベルの森林大国であるにもかかわらず
同時にウッドマイレージ大国と言えそうです。
地域材住宅は欧州材で建築した場合よりも14倍もエコ
次のグラフは外国産(欧州材)で家を建てた場合と
国産材や地域材で家を建てた場合の
木材輸送時のCO2の排出量(環境負荷)を試算したものです。
欧州材住宅と比べて、国産材住宅は環境負荷が5分の1程度で、
地域材(地産地消)住宅では、14分の1程度になっています。
住宅に限らず、国産材を使うことは、
温室効果ガス(CO2)の吸収・固定だけでなく、
木材輸送による温室効果ガス(CO2)の排出も抑止されて、
地球温暖化防止につながるのです。
国産材の積極的な利用は森林破壊も防止する
私たちは、木造住宅や木製品だけではなく、
木材チップ等を原料とする紙など、
日々の生活で木材を消費しています。
私たちが消費している木材の多くは、
世界中のあらゆるところから運ばれてくるため、
ウッドマイレージが大きく、環境への負荷も大きくなります。
一方、世界的に見れば、1時間につき、
東京ドーム127個分に相当する森林面積が
消失(2000年~2010年)しています(※1)。
この大きな原因の一つが違法伐採です。
違法伐採は、無計画に森林を伐採することで、
所有権や伐採権のない森林の伐採を行う「盗伐」や
伐採の許可を受けても伐採許可量を超えた
過剰な伐採などが相当します。
違法伐採は、熱帯雨林等に壊滅的な被害を与え、
現地の方々の生活等に悪影響を及ぼします。
日本と木材貿易と関係の深い、インドネシアでは
違法な森林伐採の割合が73%(※2)と推定されています。
また、ロシア政府は国内で生産される木材の約10%が
違法伐採であると推計(2006年)しています。
※1 FAO「The Global Forest Resources Assessment 2010」のデータより算出
※2 財団法人国際緑化推進センター「緑の地球 85号」平成19年3月
木材の利用量の7割以上を外国の森林資源に頼っている
私たち日本人の木材消費は、温暖化防止と森林破壊の
両面についての国際的な責任は小さくないようです。
身近な森林資源を見直し、環境にやさしい地域の木材利用ヘ
シフトすることが求められています。
(木づかい友の会通信)