●出生前診断

  今年の4月から日本で本格的に出生前診断が始まりました。
 
  従来は胎盤組織をサンプリング採取する絨毛検査や、
  子宮に長い針を刺して羊水を吸引する
  羊水穿刺などで確定診断しており、
  赤ちゃんが流産してしまう危険性がありましたが、
  4月から始まった検査方法は、妊婦の血からDNAを調べる
  「母体血胎児染色体検査」だけで、
  胎児の遺伝子異常が高い確率で判明できるようになった
  “新型出生前診断”になります。

  出生前診断は欧州諸国やアメリカで推し進められており、
  これらの国では早い時期から進んだ女性の社会進出、
  それに伴う晩婚化・高齢化問題があったようです。
 
  イギリスやフランスでは、中絶も女性の権利の一つと捉え、
  「産む」場合も「産まない」場合も
  手厚いサポート体制を整えています。
 
  では日本はどうでしょうか。
 
  現在、日本では法律上「胎児の異常」を理由に
  中絶することはできません。
 
  出生前診断は「早くに胎児の問題を知って、産んだ後に備えよ」
  という趣旨のもとで導入されています。
 
  導入目的が欧州諸国とどちらが正しいということは
  一概に言えませんが、
  仮にこの目的の下で出生前診断の普及を推し進めるのであれば、
  環境が整っていないと言わざるを得ないのではないでしょうか。

  世界の先頭を走る米国では、
  年間約300万件の検査が実施されています。
 
  米国では診断費用はほとんどの民間保険会社で負担しており、
  自己負担は200ドル(約2万円)以下です。
 
  1999年の調査では、出生前診断(羊水検査)で
  ダウン症の診断結果を受けた女性の90%以上が
  人口中絶を選択していました。
 
  しかし、多くのダウン症俳優、女優の活躍や、
  社会で普通に働く障害者が見受けられるようになって以降、
  障害者に対する偏見も薄れつつあり、
  その割合が90%未満に低下しているそうです。

  一方、日本では出生前診断で異常が見つかった場合、
  90年代の米国同様、4月からの半年間でも
  9割以上の人が中絶しています。
 
  先日、中国の遺伝子解析会社が
  日本国内で新型出世前診断を始めました。
 
  国内の実施施設は現在、学会の指針によって
  遺伝カウンセリングを条件に限定されており、
  遺伝カウンセリングができる態勢の整った約30施設に限られています。
 
  しかし、中国のBGI社はこれを条件としておらず、
  検査費用は10万円と従来の半額以下です。
 
  遺伝カウンセリングの専門家がいない
  産婦人科、不妊クリニックなどとも
  個別に検査を請け負う形をとろうとしているため、
  検査、病気について十分理解しないまま
  中絶する人が増える可能性もあり、
  早急な遺伝カウンセリング体制を構築する必要があります。
 
  また、日本は先行国と比べて障害者への
  福祉や教育が整っているとは言い難く、
  社会的な支援体制の構築は急務です。
 
  社会的支援という土台があってこその出生前診断ではないでしょうか。
 
  (アルフィックス日報)