●近い将来への警告
 
  先日、死者が1300人を超え、今年2月から瞬く間に
  感染を拡大させてきているエボラ出血熱ですが、
  今のところ収まる気配は見られません。
 
  1976年にアフリカのスーダンで初めて発見され、
  その近くを流れるエボラ川の名を取って命名された感染症です。
 
  非常に感染力が強く、約1~3週間の潜伏期間を経て発症し、
  致死率は50~90%、治療法は対症療法しかないという現状です。

  エボラ出血熱のような致死率の高い感染症といえば、
  エイズを思い出す方も多いのではないでしょうか。
 
  エイズは、発症後の致死率が80%以上にもなりますが、
  根治はできないものの、現在では発症を抑える薬の開発によって、
  感染しても一生の内に発症しない例も増えています。
 
  これは、1981年に初めてエイズ患者が発見されてから、
  約30年の間で新薬の開発が進み、
  今では20種類以上の抗ウイルス剤が販売されているためです。
 
  ではなぜ、エイズ以前の1976年に発見されて
  (ウイルスが特定されて)いながら、
  エボラ出血熱の治療法や治療薬の開発が進んでいないのでしょうか。

   この理由を一言で言うなら、「コストに合わないため」です。
 
  近年の新薬開発には、数百億円もの資金が必要となることは常識で、
  そのコストのほとんどを製薬会社が負担します。
 
  稀に途中で開発中止になることもありますが、その際は巨額の資金が
  無駄になってしまうというリスクも内包しているのです。
 
  こうしたリスクがある中で、
  製薬会社が新薬の開発に着手するに当たって、
  最も重要視しているのが薬を使用する患者数です。
 
  エイズは、現在でも世界中で3500万人もの感染者・患者がいます。
 
  ところが、エボラ出血熱の患者数は1976年から現在まででも
  3000人に満たないのです。
 
  これでは、製薬会社各社が二の足を踏むのも頷けます。
 
  ところが、2013年度に世界中で使われた医療関連の
  研究開発費は23兆円で、
  そのほとんどが先進諸国向けとなっているのです。
 
  結局のところ、エボラ出血熱などの途上国で発生する感染症には
  予算が付かないのが現状なのです。

   今回のエボラ出血熱の大流行から、
  現代医療の実態と限界を少し垣間見ることができました。
 
  そして、エボラ出血熱のような感染症の今後を警告しているようにも感じました。
 
  今後、世界中の人の往来が今よりも容易に、
  そして増加することは想像に難くありません。
 
  そうした事を考えた時、いくら僻地で起きている伝染病や感染症でも、
  治療法や治療薬に積極的な資金援助を行なう必要性がありそうです。
 
  コストに合わないリスクよりも、コストに合うほどの患者数になることの
  リスクを考える時に来ているのかもしれません。
 
  (アルフィックス日報)