「逆オイルショック」再び!?原油下落が世界経済に与えるダメージ

約1年で3分の1近くに原油価格下落の負の効果

http://dol.ismcdn.jp/mwimgs/7/3/300/img_736733fdfb4d04ddec5abdf8bec3494a56408.jpg 消費者の立場からは原油価格下落はメリットだが、世界経済全体で見るとそうとは限らない

  足元で原油価格の下落に歯止めがかからない。ニューヨーク市場で取引される
  WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエイト)価格は、12月14日現在、
  1バレル40ドル台を割り込み35ドル台になっている。

  昨年夏場には、1バレル100ドル以上だったことを考えると、
  約1年の間に原油価格は3分の1近くまで急落している。

  原油価格の下落によって、わが国をはじめ主要国には物価の下押し圧力が働いており
  世界経済にも無視できない影響が及んでいる。

  急落の背景には、中国経済の減速などで世界的に需要が落ち込んでいる一方で、
  サウジアラビアなど主要産油国の増産が続いていることがある。

  それによって、世界的な原油の需給が大きく崩れている。

  原油以外の銅や鉄鋼石などの資源価格も不安定な展開になっており、
  経済専門家の間では、2014年年央まで続いた
  主要資源価格の上昇=“資源バブル”が終焉を迎えたとの見方が台頭している。

  問題は、逆オイルショックに代表される“資源バブル”崩壊が、世界経済に与える影響だ。

  わが国やインドなど資源輸入が多い諸国にとって、
  資源価格の下落はそれなりのメリットがある。

  しかし、産出国にとっては、かなり大きなマイナス要因だ。

  シェールオイルの主要産出国である米国は、エネルギー関連企業の収益の低下傾向が
  鮮明化しており、これから景気の先行きに不透明感が出てくる懸念もある。

  世界経済の牽引役である米国経済の減速が明確になると、
  世界経済の回復が腰折れすることにもなりかねない。

  逆オイルショックのインパクトは小さくない。

中国経済の減速で供給過剰に原油価格は当面弱含み

  大幅に原油価格が下落した背景には、まず有力需要国である中国の景気減速がある。

  中国経済は、つい最近まで2ケタ成長を達成してきた。

  高成長を達成するために、原油や鉄鋼石などの資源を“がぶ飲み”してきた。

  そうした同国の需要増大の予測に基づき、多くの資源産出国は積極的な投資を行い
  供給能力の増強を図ってきた。

  ところが、昨年の年央以降、中国経済の減速が鮮明化し、
  旺盛だったエネルギー資源に対する需要が大きく落ち込んだ。

  それは、同国のドルベースの輸入金額が
  前年対比で20%近く減少していることを見ても明らかだ。

  一方、拡大した供給能力を短期間に大きく変えることは難しい。

  特に、原油のように膨大な初期投資と巨大な装置を必要とする分野では、
  産出力を大きく調整することは困難だ。

  しかも、米国などでシェールオイルの産出量が増えていることもあり、
  サウジアラビアなど老舗の産油国が世界市場で一定のシェアを維持しようとすれば、
  そう簡単に産油量を減らすことはできない。

  それに加えて、イランに対する経済制裁が解除されるなど、
  今後も世界的に産油量の拡大が見込める状況だ。

  そうした状況下、本来、原油産出国のカルテルであったOPEC(石油輸出国機構)は、
  その機能を果たすことが難しくなっている。

  原油価格が急落する中で一定の収入を維持しようとすれば、
  産出量を増やすしか有効な方法が見当たらないからだ。

  そのため、仮にOPEC総会で減産の合意が形成されても、
  どこかの国が抜け駆けすることは目に見えている。

  「それなら最初から減産の合意など作らなければよい」ということになる。

  原油市場の供給過剰は、そう簡単に解決することはできないだろう。

  当面、原油価格は弱含みの展開が続くと見られる。

バブルの連鎖=“資源バブル”発生と その崩壊が世界経済に与えるダメージ

  逆オイルショックを考える時、もう一つ頭に入れておくべきポイントがある。

  それは、1990年台中盤から続く“バブルの連鎖”だ。

  90年台中盤から2000年まで、米国の株式市場を中心に“ITバブル”の現象が顕在化した。

  具体的には、ITに関連した企業の株が、
  その内容の如何を問わず一様に急騰したのである。

  IT株の急騰は米国だけに限らず、わが国や欧州諸国にも波及した。

  2000年に“ITバブル”が弾けると、世界的に景気は後退期を迎え
  経済の低迷する時期が続いた。

  その後、2003年以降、米国中心に“不動産バブル”へとバトンタッチすることになる。
 
  “不動産バブル”は最終的にサブプライム問題を引き起こし、
  住宅ローン担保債券が欧州投資家にまで流布していたこともあり、
  欧州諸国にまで被害が拡散した。

  それは、最終的にリーマンショックに繋がり、
  世界経済は崖から突き落とされるように急落した。

  それに対して世界の主要国は、積極的に金融緩和策を実施し景気の下支えに走る一方、
  中国は4兆元の経済対策を実施して景気拡大の維持策を取った。

  その政策で同国は2ケタ成長を維持することができた。

  しかし、中国が高成長を続けた結果、世界的に資源に対する需要が大きく盛り上がった。

  原油や鉄鋼石、銅などの価格が軒並み上昇傾向をたどった。

  大手投資家はそうした資源価格の上昇に目を付け、商品市場への投資を活発化させた。

  金融緩和策で供給された巨額の流動性の一部が資源の市場に流れ込み、
  買うから上がる、上がるから買うというサイクルが醸成された。

  いわゆる“資源バブル”が発生したのである。

無視できない米国経済への痛手 新興国からの資金流出の懸念

  しかし、バブルが永久に続くことはない。

  今回の“資源バブル”も、中国経済の減速鮮明化等で需要が縮小したことによって、
  2014年の年央以降崩壊の局面を迎えた。

  そうした状況の中で、世界経済に最も重要な影響を与えるのが原油価格の動向だ。

  原油価格の下落が、米国経済に無視できない痛手を与える可能性が高いからだ。

  元々、米国にはエネルギー関連企業が少なくない。

  ロックフェラー財閥の大元は石油関連にたどり着く。

  また、米国には大手石油会社や資源開発企業などが多い。

  さらに、シェールオイル事業が大きく盛り上がったこともあり、
  原油価格の変動が米国経済に与える影響は強まっている。

  もう一つの懸念事項は、今までバブルを支えてきた
  米国の金融緩和策が変わろうとしていることだ。

  昨年10月、量的緩和策に終止符を打った米国FRBは、
  今後金利の引き上げに動くと見られる。

  金融政策の引き締めへの変更は、資源価格の動向に影響を与えると同時に、
  株式や為替などの金融市場にも不安定要因として作用する可能性が高い。

  また、政策金利の引き上げは住宅ローンや自動車ローンの金利上昇につながり、
  中期的に見ると、景気にブレーキをかける可能性が高い。

  さらに、基軸通貨国である米国で金融政策が引き締められると、
  新興国から投資資金が流出し、当該国の景気の足を引っ張ることも考えられる。

  それらが現実味を帯びてくると、世界経済は再び低迷期を迎える可能性が高まる。

  問題は、そうした懸念が現実化した場合、
  主要国にそれに対する手だてがほとんど残されていないことだ。

  主要国の財政状況はかなり悪化しており、大規模な財政政策の出動は難しい。

  また、わが国をはじめ先進主要国はゼロ金利や量的緩和策を実施済みで、
  金融政策にはほとんど政策の余地が残っていない。

  手足を縛られた状況で、如何にして景気低迷状況を打ち破るか。

  新しい経済対策の選択肢を編み出さなければならない状況に追い込まれる可能性は高い。

  (ダイアモンドオンライン)