●世界の穀物需給

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  記憶に新しいと思いますが、昨年はエルニーニョ現象の影響で
  日本においても異常気象が多発しました。

  夏場は冷夏と猛暑を繰り返し、冬場も12月の大暖冬から
  1月は一転大寒波が到来。

  九州地方での降雪に驚かれた方も多いのではないでしょうか。

  日本のみならず世界でも南アフリカにおける過去20年で最悪の干ばつ
  インドでの熱波、カリフォルニアでの干ばつなど
  まさに世界中で異常気象が多発した年でした。

  昨年でさえ多大な影響をもたらしたエルニーニョが
  実は今年さらに勢力を増していることをご存知でしょうか。

  NASAは気象観測衛星から得たデータにより、
  エルニーニョは勢力を依然拡大していると指摘し、
  「ゴジラエルニーニョによって未曾有の危機が訪れる」と警鐘を鳴らしています。

  海洋研究開発機構によれば、エルニーニョと世界の主要穀物の生産変動には
  関係性があり、特にトウモロコシ、コメ、コムギにおいて
  エルニーニョ年に平年収量を下回る傾向がみられるようです。

  あらゆる資源の中で穀物は種を蒔いて生産するという性質上、
  鉱物や原油とは違い(収穫後には)生産を増やすことが出来ません。

  世界全体の穀物需給を見てみますと、
  世界的な人口増や新興国の経済発展に伴う食生活の変化に加え、
  バイオ燃料向けの需要から消費量は年々増加しています。

  一方、供給面は技術革新により単収が上がり、
  生産量は増加傾向にありますが、
  主要国の農業政策の変更や天候による作柄の増減等により、
  大きく上下する場合があります。
 
  近年では異常気象により、穀物の生産量が低下。

  世界の穀物(小麦・米・トウモロコシ)在庫は
  2006~2008年に17%台の低水準になり、
  2008年には穀物価格が急騰しました。

  これをきっかけに各国が自国の食料安全保障対策に力を入れ、
  備蓄の拡大や増産により、在庫は一時的に回復しましたが、
  ここ数年は20%前後での推移が続いています。

  在庫率が20%を分かりやすく言いますと、
  約73日分しか在庫がないということです。

  つまり、2012年のように米国が高温・乾燥に見舞われ、
  世界の穀物在庫が減少しますと、穀物価格は瞬く間に急騰し、
  2008年の高値を超える可能性も考えられます。
 
  世界各国の需給状況を見てみますと、供給面では、
  南アフリカでの記録的干ばつにより、穀物の生産量見通しは著しく悪化し、
  トウモロコシの収穫量が2007年以来の低水準となる可能性が高まっております。

  また、インドでも小麦の耕作面積の縮小が見込まれております。

  そして、需要面では、中国は穀物に関して国内自給が原則でしたが、
  最近では輸入が徐々に増えてきており、
  これから世界の穀物生産量が増えることを加味しましても、
  2023~24年には在庫率が17%にまで下落する見通しです。

  今年、もし異常気象で収穫量が減少するようであれば、
  2008年や2012年の再来になるかもしれません。

  主な穀物は一年草ですので、毎年春先に種子から育てなくてはいけません。

  穀物の生産は春先に始まり、秋ごろに収穫されます。

  北半球と南半球では季節が逆になりますので、
  北半球は毎年4月~9月頃、南半球は10月~3月頃となります。

  つまり南半球の収穫が終わり、
  今年の北半球の穀物の生産はこれから始まります。

  北半球の穀物の生育の流れは、
  まず毎年3月31日に今年の大まかな収穫量を決める
  作付け意向面積が発表されます(確定値は6月)。

  そして4月からは実際に作付けがはじまり、穀物を生育していきます。

  この間は常に天候の影響を受け、価格に影響します。

  例えば作付け期が必要以上の長雨となりますと、
  作付け期の遅い他の穀物への作付けシフトが懸念され、
  作付け面積の減少が価格上昇の材料とされることもあります。

  このように通常は日照時間と降雨、気温等に注目されますが、
  エルニーニョなどの影響で異常気象が発生し、
  急激な価格変動に見舞われることケースもあります。

  そして、最も注目すべき時期は7月初めの受粉期です。

  この受粉期に高温・旱魃の影響を受けますと、受粉が上手くいかず、
  結果的に秋の収穫も減少することになります。

  この時期は大きな価格変動が起こることが多く、
  実際昨年の受粉期は大きく値上がりしました。

  3月の生育スタートと並び、最も注目される時期となります。

  (アルフィックス日報)