●これからの世界遺産
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  新たな世界文化遺産に登録されると大きな話題となった
  国立西洋美術館ですが、7月15、16日の二日間に渡って、
  いよいよ世界遺産登録に向けた審議が始まります。
 
  しかし、現在の世界遺産登録に関しては多くの課題を抱えています。

  その中でもとりわけ大きな課題となっていることは
  「運営費用が少ない」ということです。

  これは登録審査を行なっている機関である
  「イコモス(国際記念物遺跡会議)」の内情です。

  この運営費用は会員一人当たり年間に約1万円を徴収し、
  その約半分を本部のあるフランスに送り、保全維持や登録審査、
  そして6年に一度行なわれるモニタリング
  (既存の登録された世界遺産に対して審査を行い、
  今後の維持が困難だと認定されれば危機遺産リストに登録する)
  といった活動に当てられています。

  会員は現在約1万人ですので、年間予算は5000万円ということになりますが、
  全世界という規模において将来的に登録数、保全数が増えることを考慮すると、
  あまりに心細い資金状況だということがわかります。

  実際、審査に派遣されている方によると
  ボランティアに近い形での視察を行なっているという話もあり、
  登録は年々困難となっています。

  年間で調査可能なのは50件前後と言われていますが、
  その申請数は150件にのぼります。

  そのため、世界遺産申請は
  有形文化遺産(屋久島や富士山)と無形文化遺産(歌舞伎や人形浄瑠璃)を
  2年間で一件ずつしか出来なくなりました。

  また、登録数の多い国に対しては、
  登録申請そのものの辞退が迫られるようになっています。

  世界で191カ国が加盟していますが、日本の登録順位は世界で11位、
  アジア圏内で3位という立場であることを考慮すると
  今後の登録は、ますます困難になると言えます。

  そんな中、先月、英国EU離脱が起こりましたが、
  登録に関わる役員にはヨーロッパ圏出身の人も多いため、
  今後会員に影響が無いとは限りません。

  そうなると人手不足となるだけでなく、
  今以上の資金不足に陥る可能も考えられます。

  世界遺産登録によって観光客が増加するという
  ビジネス的側面を持つようになった現在、
  学術的な議論だけでは済まなくなり、
  政治的側面も関与するようになりました。

  今後も歴史的に価値のある世界遺産を残すためにも、
  世界経済の安定が一層求められるようになると思われます。

  (アルフィックス日報)