●卵が先!!    
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  現在、鳥取県に住む二人の女子高専生の研究が
  世界中で注目されております。

  その研究とは「卵の膜」を使用して、
  燃料電池のコストを低減することです。

  燃料電池は水の電気分解と逆の仕組みで、
  水素と酸素を化学反応させて発電する装置で、
  二酸化炭素を排出しないクリーンなエネルギーとして注目されています。

  その燃料電池を構成する上で重要な電解質膜に
  「卵の膜」を使おうというわけです。

  これまで、卵殻膜やタマネギの皮は、酸素を通し、
  細菌を通さないフィルター機能があり、
  色素液に漬けると色素を吸い上げることまでは確認されていました。

  そこで二人は、発電に必要な「電解質膜」をタマネギの皮やサツマイモの皮、
  卵殻膜など、従来廃棄される天然物質での代用についての研究を始めます。

  最終的には耐熱性の高い卵殻膜を使用することに決まりますが、
  ここからが大変です。

  最も試行錯誤を繰り返したのが、
  燃料電池で生まれる電気の通電性を高めることだったそうです。

  この問題は、卵殻膜に塩化白金酸溶液を染み込ませることで
  高い通電性が発生することを発見することができ、
  その結果、燃料電池に応用することに至ったのです。

  実際のコスト比較ですが、従来の電解質膜に使用される
  石油由来の素材「ナフィオン」の膜だと、3cm四方で1枚約800円です。

  対して、卵殻膜は同サイズで14.4円と55分の1以下に
  コストを抑えることが可能になります。

  さらに、卵殻膜に塩化白金酸溶液を染み込ませる経過を、
  塩化白金酸溶液より安価な塩化鉄溶液を用いることで、
  同サイズで0.9円とさらなるコストダウンも可能になるそうです。

  また、電解質膜の廃棄時も、ナフィオン材と比べて
  環境面への悪影響を大幅に低減できることは言うまでもありません。

  ただ、実用化への最大の課題は燃料電池の出力です。

  現在、ナフィオン膜の発電が1平方cmあたり10kWに対し、
  卵殻膜は約10分の1程度に留まってしまいます。

  こうした課題はあるものの、本来ゴミになる卵殻膜のリサイクルは、
  大手食品メーカーも支援しています。

  さらに、今月14日に米国で開かれた国際学生科学技術フェアでも入賞を果たし、
  世界的にも注目される技術となっています。

  燃料電池は、日本の国家戦略として位置づけられる水素社会の実現に
  大きく関わる分野ですので、今後の研究からも目が離せません。

  (アルフィックス日報)