●革命連鎖
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  2014年以降、米シェール革命を背景に原油価格が暴落し、
  窮地に追いやられているOPEC、非OPECの産油国。

  特にOPECの盟主であり、産油量で世界一を争う
  サウジアラビアへの経済的打撃は計り知れません。

  歳入の80%以上を原油輸出に頼るサウジアラビアは価格の下落で
  財政が悪化したため、昨年初めて海外で国債を発行(175億ドル)して、
  資金調達しています。

  また、サウジアラビアには所得税や住民税、消費税がなく、
  医療費・教育費(公的機関のもの)も国民は無料でしたが、
  今後は国民向けの補助金の削減や新税の導入が進められる見込みです。
 
  窮地に追いやられているサウジアラビアですが、
  対策として「ビジョン2030」という改革構想を打ち出しています。

  これはムハンマド副皇太子が中心となり、
  2030年までに石油依存型経済から脱却し、
  投資や観光、製造業、物流など経済の多角化を目指すと言うものです。

  計画には生活水準やGDP、貯蓄率等の目標値が具体的に設定されていますが、
  目標値の高さ、国内の反対勢力や負担が増加する国民からの反発等が予想され、
  100%の達成は厳しいかもしれません。

  しかしながら、原油安で傾いた財政を立て直すには、
  原油に依存しない多角化は不可欠です。
 
  ビジョン2030の中で目玉となる政策は、
  国営石油会社「サウジアラムコ」の株式上場です。

  上場後の時価総額は2兆ドルに上ると言われ、
  その5%の約1000億ドルが上場予定です。

  これは時価総額、上場額共に群を抜いて史上最高額になります。

  上場先が未定なのですが、これに日本が着目し動いています。

  1月初旬に日本取引所グループの清田瞭CEO率いる一行が、
  東証の魅力を伝える為に、異例のアポ無しでサウジアラビアを訪問。

  無事、ムハンマド副皇太子やその他関係者との接触に成功しました。

  しかし、上場先の有力候補はニューヨークやロンドン、香港市場とされています。

  もし、日本の熱意が伝わり東証での上場が叶えば、
  東証活性化の起爆剤になるのは間違いありません。
 
  これまでのサウジアラビアは、原油価格よりもシェアを重視し、
  自国の影響力を保持する戦略でした。

  その戦略はシェール革命によって崩され、ビジョン2030に見られる
  新戦略への転換を図ることになりました。

  ムハンマド副皇太子の挑戦は、サウジアラビアにとって革命的なものです。

  シェール革命はアメリカで起こりましたが、その波は高さを増しながら広がり、
  産油国に革命をもたらそうとしています。

  (アルフィックス日報)