●肌感覚を大切に
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  インドの衛生問題を画期的に解決しようとするベンチャー企業があります。

  ソーシャルベンチャーのスヴァーダー社です。

  同社はトイレの変革を通して、地域の衛生環境を改善する取り組みを進めています。

  インドでは古くからのカースト制度の影響もあり、
  自宅にトイレを持つことは贅沢なことだと考えられていました。

  このため今でも地方部では自宅にトイレがありません。

  スヴァーダー社はトイレ付きの建物と汚水の管理設備をセットで提供することで、
  各家庭へのトイレ導入を目指しており、これが大きなビジネスチャンスになります。

  インドの地方の衛生市場は約250億ドル、
  そのうちの約140億ドルがトイレ需要とされており、
  衛生分野でのビジネスモデルの一つとして期待されています。

  一方、日本においてトイレは今や快適な場所となっており、
  ホテルやデパート、公共施設など清潔なトイレの存在感は増すばかりです。

  特に、温水洗浄便座の普及率は国内で約80%と高く、世界一のトイレ先進国です。

  そして今、欧州に日本発の「トイレ革命」をもたらそうと、
  日本の大手メーカーが本腰を入れています。

  欧州では温水洗浄便座を備えたトイレは一部高級ホテルなどに限られ、
  普及率も1%に満たないともいわれています。

  2008年に欧州に進出した衛生陶器最大手TOTOは、
  今月中旬にフランクフルトで開催された住宅設備見本市「ISH」に
  最新型の便器を出展しましたが、
  今はまだブランドの認知を広める段階だといいます。

  この温水洗浄便座ですが、
  実は日本発祥ではなく米国から輸入したのが始まりです。

  前述のTOTOが1964年に販売した「ウォッシュエアシート」は、
  現地では医療用として流通していたものでしたが、
  水温が安定しないことや水が当たらないなどクレームが多かったようです。

  そこで自社開発に踏み切り、1980年に初代「ウォシュレット」が誕生します。

  当時の開発チームが徹底的に調査したデータは
  今もほぼ変わらず受け継がれていて、
  「温水は38度、乾燥用の温風は50度、ノズルから吐水するシャワーの角度は43度」
  が一番効果的だそうです。

  また、地道な営業活動も市場の拡大につながっています。

  便座は商品の性質上、買い替えのタイミングが10年~20年単位と
  長いスパンですので、水道工事店の担当者に実際に使ってもらって、
  買い替え時にお客さんに良さを伝えてもらう営業スタイルで、
  全国約5万店を味方につけたとのことです。

  海外ではトイレの話がタブーである国が多く、文化や歴史の違いもあり
  「日本のトイレ文化」が根付くのはまだまだ時間がかかりそうです。

  しかし、トイレ事情はパーソナルな事柄だけに肌感覚で理解することができれば、
  世界中で日本発の「トイレ革命」が起こる可能性も秘めています。

  (アルフィックス日報)