●研究者の悲鳴
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  10月上旬に今年のノーベル賞受賞者が発表されました。

  日系イギリス人のカズオ・イシグロ氏受賞が話題となりましたが、
  ここ数年必ず日本人が受賞していた自然科学部門では
  今回日本人の名前はありませんでした。

  この結果をたまたまだと言ってしまえばそれまでですが、
  携わる研究者達の経済的背景にまで視野を拡げると
  「今後日本からノーベル受賞者は出ない」という可能性すら見えてきます。

  「ご支援のお願い」・・・。京大iPS細胞研究所所長で
  ノーベル賞受賞者でもある山中伸弥氏が研究所HP上で
  そう訴えていたことが先日メディアでも取り上げられました。

  山中氏によると「iPS細胞実用化までの長い道のりを走る弊所の
  教職員は9割以上が非正規雇用です。

  これは、研究所の財源のほとんどが期限付きであることによるものです。」
  とのことで、昨今の企業でも顕著な「短期的業績の重視、非正規雇用の増加」
  がノーベル賞レベルの基礎研究においても傾向となっているのです。

  もちろん寄付により研究が支えられるのは美談ではありますが、
  変動する寄付金よりも長期安定財源の提供のほうが
  研究にも没頭できるというものです。

  では、その安定資金に関して現状はどうなっているのでしょうか。

  通常ノーベル賞を受賞するような研究は多くの場合、
  大学や研究所に身を置いた基礎研究であり、
  研究費は大学の研究資金や政府の補助金に頼ることになります。

  21世紀になってからの自然科学部門での日本人ノーベル賞受賞者は16人、
  その受賞時の平均年齢は68歳ですので、
  研究にもっとも没頭できる年代を30代から50代と考えると、
  大まかに1970年代から2000年代初頭あたりの研究が実った、
  というのが実情でしょう。

  当時はバブルをはさんだ時期で、大学に余裕があったと考えられますし、
  現在ほど短期的成果への偏重もなく、比較的研究資金が
  長期にわたって安定的に供給されていたと思われます。

  政府の取組としては、文科省が発表する資料である
  「科学技術関係予算等に関する資料」によれば、
  政府負担研究費割合は1980年から右肩下がりでしかも先進国最低水準、
  基礎研究費割合は低い水準で横ばい、となっています。

  これらを総合すると、今までのノーベル賞受賞者の研究最盛期に整っていた
  環境が、バブル崩壊と共に壊れ始め、それにもかかわらず政府の補助金は
  「財政問題」のせいで増えず、かてて加えてグローバリズムの跋扈により
  本来長期に根ざした環境が必要な基礎研究においても短期的成果が追及され、
  結果山中氏のような事態が発生している、ということではないでしょうか。

  資源が無い中で高い技術で発展してきた日本。

  その礎が崩壊する時が本当の危機なのかもしれません。

  (アルフィックス日報)