●新たなる火種「米ローン三兄弟」
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  最初の訪問地に日本を選び、
  現在就任後初めてアジアを外遊している米トランプ大統領ですが、
  米国ではリーマンショック以降、景気拡大が9年目を迎えています。

  そもそもリーマンショックのきっかけの一つとなったのは
  低所得者層向けの住宅ローンである
  サブプライムローンが複雑に証券化され横行する中で、
  住宅バブルが崩壊したことにありました。


  その後大規模な金融緩和とゼロ金利政策により
  NYダウは最高値を更新するまでに至り、
  回復の途を辿っている状況です。

  当時の教訓から、様々な金融規制改革がなされ、
  再度同様の危機に陥るリスクは当面低いとは考えられています。

  しかし、その住宅ローン以外のある3つのローンが、
  起こり得る新たなリスクとして燻っていることはご存じでしょうか。

  それが自動車ローン・学生ローン・クレジットカードローンです。

  現に、住宅ローンの残高は2007年時点で約9兆ドルに対して
  今年6月時点では8.6兆ドル程度に抑えられていますが、
  自動車ローン・学生ローン・クレジットカードローン
  3ローンの残高は、同時期を比較して
  おおよそ2.2兆ドルから3.3兆ドルまで拡大してきています。

  さらには、低所得者層(サブプライム)向けの比率が
  自動車16.1%、学生29.8%、クレジットカード12.3%と
  住宅の6.8%と比較して高い事も懸念されます。

  もちろん、リーマンショック時の住宅ローンのように
  複雑に証券化され、世界中に流通している訳ではありませんが、
  サブプライム危機前の住宅ローンの新規デフォルト率が
  6~7%であったのに対し、これら3ローンは7~10%程度と
  既に当時の水準を超えしまっている事を考えると
  あながち安堵できる状態でもありません。

  FRBは現在、金融緩和から一転し、
  資産縮小や利上げの時期に来ていますが、
  金利上昇のペースが予想以上に早くなると
  家計のローンの負担も拡大し、消費者マインドが冷え、
  米国景気の下押しリスクにもなりかねないのではないのでしょうか。

  今回、次期FRB議長には比較的穏健派といわれる
  パウエル氏が指名されましたが、その背景にあるのも、
  このような米国内に潜む次なる危機へのリスクの
  火種を考慮してのことと思われます。

  トランプ大統領も就任からもうすぐ1年を迎え、
  FRBも新たな方向性を求められる局面となりました。

  今後の舵取りに注目したいです。

  (アルフィックス日報)