住宅用太陽光発電の誤算、「10年で投資回収」は大ウソだった②
政府はFIT終了を
「自家消費型のライフスタイルへの転換を図る契機」と位置付ける。
ただし現在の蓄電池の相場は80万円から160万円。
EVは補助金込みで350万円程度と、
いずれも一般家庭には大きな負担だ。
政府は、自家消費のメリットをアピールすることで、
蓄電池の需要を喚起し、
メーカーの技術革新によるコストダウンを誘導しようとしているのだ。
では、引き続き売電する選択肢はどうか。
残念ながら、利用者が得する効果は期待できない。
「買い取ってもいいけど、せいぜい2~3円/キロワット時でしょう。
ただで引き取ってもいいくらい」。
ある大手電力会社の関係者は、本音をこう打ち明ける。
電気はためられないという性質上、需要と供給を一致させなければ、
送配電網に負荷がかかり停電を引き起こす。
太陽光発電は天候によって発電量が左右されるため、
需要と供給のバランスを保つのが非常に難しい。
大手電力会社にとって太陽光発電は“厄介者”だ。
そんな厄介者をFITによる破格の値段で買い取れたのは、
電力会社がコストに一定程度の利潤を上乗せして
電気料金を設定できる「総括原価方式」があったからだ。
しかし、今は電力小売り自由化の戦国時代。
総括原価方式は終わり、大手電力会社は
他社との顧客獲得競争に勝つため、コストダウンに余念がない。
そもそも自前の発電所でつくる電気で需要を賄える
大手電力会社にとって、燃料費ゼロの太陽光発電をあえて
値段を付けて買い取るメリットは、そう多くない。
一方、自前の発電施設を持たない一部の新電力は、チャンスとみて
FIT終了後の太陽光発電を買い取る意向を表明している。
それでも、実際に買い取り価格を示したのは、
スマートテックの8円/キロワット時(通常価格)ぐらい。
住宅用太陽光発電が従来通り、高く買ってもらえる保証はない。
それでは政府の狙い通り、FIT後の住宅用太陽光発電は、
蓄電池を導入した自家消費に移行するのだろうか。
しかし、事はそう簡単にはいきそうにない。
FITが終了した住宅用太陽光発電のほとんどが、
初期投資を回収できていないとみられているからだ。