●レジ袋有料化を推し進める国の環境対策に「あと1つ足りない視点」

レジ袋の有料化義務付けは
環境対策にどれだけ役立つか


  環境省が、スーパーやコンビニなどの小売店で配布されるレジ袋の
  有料化を義務付ける方針を固めたそうだ。
  想定しているのはレジ袋1枚あたり数円。
  目的は海に流出した廃プラスチックによる環境汚染対策や、
  パリ協定に関連した温室効果ガス削減だ。
 
  もともと日本のスーパーでも、独自にレジ袋の有料化に
  踏み切ったケースは少なくない。
  イオンの場合、5年前からレジ袋の無料配布を取り止めた。
  現在では、中サイズのレジ袋が13円、大サイズのレジ袋が15円。
  しかも、バイオマス素材のレジ袋を使用することで、
  温室効果ガス対策に一定の配慮をした対応になっている。
 
  こうした取り組みを行っているスーパーでは、
  レジ袋を辞退する人が約半数にのぼっているという。
  それだけの効果があるということで、
  環境省は日本全体での義務化に踏み切ろうと考えているのだろう。

  実はこの取り組み、海外と比較して1つ重要なことが欠けている。
  このままのやり方では、レジ袋の有料化に踏み切っても
  効果が出ないことが懸念される。
  その謎解きは本稿終盤で行うとして、まずは状況を整理しよう。
 
  報道によれば、日本国内で配布されるレジ袋を合計すると
  年間450億枚になるという。
  国民1人あたり毎日1枚のレジ袋を持ち帰ると、ちょうど1年でその数になる。
  この数字にこだわって、状況分析をしてみたい。
 
  私が都会に住んでいるせいだろうか。
  生活感覚的には、毎日3枚はレジ袋を持ち帰っている気がする。
  今朝も出勤する途中でコンビニで1枚、
  昼過ぎにドン・キホーテで雑貨を買って1枚というように、
  買い物するたびにレジ袋が手に入る。
  都会生活においては、感覚的には11枚では少なすぎる感じだ。

  しかし、統計上、1人につき11枚となっているということは、
  私とはライフスタイルが違う一定数の人口がいるということだろう。
  13枚使う人が人口の3分の1で、
  レジ袋をまったくもらわない人が人口の3分の2であれば、
  計算上は日本のレジ袋消費は、1人につき11枚ということになる。

  レジ袋をもらう頻度が少ない人には2通りあって、
  一方は小学生以下の子どもと85歳以上の高齢者、
  もう一方はエコバッグを持ち歩いて積極的にレジ袋をもらわない人だ。

  我が家では家内がもう数年もの間、
  このようなライフスタイルになっており、
  2袋以下の買い物であれば自前のエコバッグを利用し、
  レジ袋は受け取らない。
 
  現実に、イオンのような大手スーパーがすでに数年前から
  レジ袋の有料化を進めていて、
  賢い主婦がエコバッグの利用を進めているので、
  現在の「日本全国で年間450億枚」というレジ袋の消費量は、
  一定の効果が出た後の数字だということになる。
  ここを議論の出発点としたい。

コンビニのお客とスーパーでレジ袋を
購入し続けるお客を動かせるか

 
  今回の施策のポイントは、ここからさらに踏み込んで、
  有料化によって450億枚からどれだけ大幅に削減させられるか
  というところにある。
  その場合、どのような課題が出現するだろうか。
 
  まず最初の重要なターゲットは、コンビニのレジ袋を減らすことである。
  こちらはスーパーとは違い、
  セブン-イレブン、ファミリーマート、ローソンの大手3社は、
  少なくとも全国的にはレジ袋有料化に取り組んではいない。
  少し業態は違うが、イオン系列のまいばすけっとでもレジ袋は無料だ。
  これらの店舗で有料化が義務付けられたら、どうなるだろう。
 
  おそらくコンビニでレジ袋が有料化されても、
  レジ袋を辞退する人の比率は2割程度と、
  スーパーのような効果は出ないのではないか、
  というのが私の推論である。

  理由は、コンビニのお客は価格感応度が低いからだ。
  毎回3円出して袋をもらうのがまったく気にならないという
  金銭感覚を持つのが、コンビニの客層なのである。
 
  同様に第二のターゲットとしては、現在レジ袋を有料化しているスーパーで、
  依然としてレジ袋を購入している人たちをどう減らすか、ということだ。
  すでにレジ袋が有料化されていることから、環境省が新たに旗振りをしても、
  こうした層の生活行動はほとんど変わらないだろう。

  この「2大ターゲット」が動かないとするならば、
  環境省の言う「レジ袋を1枚数円で有料化する」というだけの施策では、
  年間450億枚のレジ袋は300億枚程度までしか減らないのではないかと、
  私は危惧するのである。

ハワイの小売店に学ぶ
レジ袋を減らす「魔法」

 
  ではどうすれば、現在450億枚のレジ袋を、たとえば50億枚くらいまで、
  つまり9割方削減するようなことができるだろうか。
  ここで、海外のやり方がヒントになるのではないかと思う。
  
  米国ハワイ州のやり方を紹介したい。
  ハワイ州では、2020年を目標にレジ袋の完全廃止を推進している。
  まだレジ袋を配っている店は残っているが、
  大手ディスカウントストアのウォルマートやロングスドラッグスでは有料化、
  ワイキキのスーパーでは紙のバッグに商品を詰めて渡すというように、
  小売店の動きが変わってきている。
 
  1つ目を引くのが、その有料化されたレジ袋である。
  頑丈なのだ。
  ウォルマートのレジ袋は素材が分厚くて、
  取っ手のところも二重に強化されている。

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  これはハワイ州の法律により、
  従来のプラスチックバッグが禁止される一方で、
  一定の厚みよりも分厚いプラスチックバッグの
  有料販売が認められていることによる。

  実はウォルマートでは、このレジ袋は100回以上再利用できる
  「エコバッグ」として販売している。
  見た目は分厚いレジ袋であっても、実はエコバッグ。
  かつ、ここがポイントなのだが、その価格は110セント、
  つまり日本円にして11円となっており、ちょっと高いのだ。
 
  私は環境省がマネするべきは、この点だと思う。
  現行のレジ袋は全面的に廃止して、レジで販売するものは
  繰り返し使える頑丈なレジ袋に変更する。
  さらに、価格感応度が低い人でも気にするような、
  10円ないしは20円まで値上げして販売する。
 
  そうしなければ、年間450億枚のレジ袋は、
  目に見える環境への貢献ができるほどの減少にはつながらないだろう。
  なぜなら、施策のターゲットとして動かすべきは、
  すでに有料化を受け入れている人たちではなく、
  まだ有料化を受け入れていない
  「3円程度のレジ袋なら気にせずに買ってしまうような人たち」なのだから。

  (ダイヤモンドオンライン記事から)