●放置国家
  米国の格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスは24日、
  日本国債の格付けを1段階引き下げました。
 
  「Aa2」から「Aa3」への格下げでしたが、これは21段階の格付けのうち、
  上から3番目から4番目(中国と同じ)への引き下げです。
 
  同社による日本国債の格下げは約9年3ヶ月ぶりであり、
  その理由として多額の財政赤字と政府債務の増加を挙げ、
  頻繁に首相が交代する政治の不安定さが経済・財政改革を妨げているとのことでした。
 
  また、今回の格下げに伴い、長期国債を保有する複数の邦銀も平均で
  1段階の格下げをするという発表がありました。

  ところが、当日の市場に目立った反応はありませんでした。
 
  これは、5月末時点で「3ヶ月ほどかけて格下げを最終判断する」
  という発表が行われていたためです。
 
  むしろ、市場では「格下げと言ってもまだAa(ダブルA)クラスにあり、
  機関投資家からの売りが出始めるシングルAへの格下げを回避できた」
  という安心感さえ広がっていました。
 
  また、「この度の格下げが決まり、ルール上は今後12~18ヶ月間の格付け変更はない。」
  と同社幹部がコメントしており、目先の危機が回避されたということになります。

  ただ、手放しで喜んではいられません。
 
  そもそも同社が格下げに踏み切った理由である
  「財政赤字と政府債務の増加」については、何の解決策も見出されていないからです。
 
  すでに、政府債務残高の規模は、家計貯蓄だけで消化するには大きくなり過ぎており、
  公債等残高は10年度827兆円と、家計部門のネット預金残高
  (預金残高から借入残高を除いた)の同754兆円を上回っています。
 
  また、最近発表された「中期財政フレーム」では、
  2010年代半ばには公債等残高が1000兆円の大台に乗ると予測されています。
 
  つまり、このまま日本政府が新たな財政策を打ち出せなければ、
  12~18ヶ月後には更なる格下げが行われるかもしれないということです。

  そして、もう一つの大手格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)では、
  既にあと一段階でシングルAという段階まで格下げされており、
  4月下旬には東日本の復興支出増を理由に格付け見通しを「ネガティブ」にしています。
 
  これは今後2年以内に格下げする可能性が3分の1あることを意味しています。
 
  つまり、1~2年以内に大手格付け会社2社から
  シングルAに格下げされる可能性があるということです。
 
  海外の金融機関は欧米の格付け会社を基準にするため、
  日本国債売り・円売りの引き金になるかもしれません。
 
  (あるる)