●108

  一年の最後の夜、どこからともなく鐘の音が聞こえてきます。
 
  皆様もご存知の「除夜の鐘」です。
 
  古い年を除き去り、新年を迎える日という意味から
  大晦日のことを「除日」と言い、
  その夜につかれる鐘ということで「除夜の鐘」と呼ばれています。
 
  そして、その鐘は、新しい年になる深夜0時をはさんでつかれます。
 
  鐘をつく回数は108回とされており、107回までは旧年中に、
  残りの1回を新年につくようにするのが慣習になっていますが、
  「108」という数の由来についてご存知でしょうか。

  一般的には煩悩説が有名と言われています。
 
  人間には、眼(げん)耳(に)鼻(び)舌(ぜつ)身(しん)意(い)の6感が、
  それぞれ好(こう:気持ちが好い)悪(あく:不快)
  平(へい:どちらでもない)の3種あり、3×6=18の煩悩となり、
  これが、浄(きれい)染(きたない)の2種に分かれます。
 
  18×2=36の煩悩は、
  さらに、過去、現在、未来の3つの時間が関わって、
  36×3=108となるようです。
 
  これが人間の煩悩の数を表しており、
  この煩悩を取り除くための108回とされています。

  その他の説として、12ヵ月(1月~12月)、
  24節気(立春、春分など)、
  72候(5日を1候とした昔の暦)を全て足した数が
  108となる中国の暦に由来する説や、
  「4×9(四苦)」と「8×9(八苦)」を足すと108になることから、
  四苦八苦を取り除くためといった説もあるようです。
 
  ちなみに、鐘を鳴らすことは中国の宋の時代に遡ります。
 
  そのつき方としては「慢(よわく)十八声、緊(はやく)十八声、
  三緊三慢共一百八声」といって、
  弱くつくのを18回、速くつくのを18回とし、
  それを3セットずつで108回とされています。

  そして、鐘の周りに突起がありますが、
  これは「乳(ち)」と言われるもので、ほとんどの鐘に付いています。
 
  この乳の数も108個あり、
  除夜の鐘にまつわる108は回数だけではないようです。
 
  また、戦時中は各地の寺社から鐘が供出されたため、
  除夜の鐘をつくことができないお寺もあったことから、
  大晦日の風物詩としてだけでなく、
  平和の象徴としての意味も持っているようです。
 
  一年の出来事を振り返り、
  新しい年への希望を呼び起こしてくれる除夜の鐘。
 
  静寂の中に響き渡る108回の音色に
  願いを込められてみてはいかがでしょうか。
 
  (あるる)